日本心・血管病予防会10周年記念講演会

〜ここまで進んだ血管病治療〜

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〜ここまで進んだ血管病治療〜

オンライン市民公開講座

大動脈瘤に対する血管内治療

国際医療福祉大学三田病院 血管外科

小櫃 由樹生

 大動脈瘤は動脈壁が何らかの原因により障害され、血圧に抗しきれなくなった結果、動脈が拡張した状態を称します。病因として動脈硬化,炎症,先天性,外傷などがありますが、動脈硬化を背景にしたものが90%以上を占めています。このため、他の動脈硬化性疾患と同様に高齢の男性に好発し、高血圧症,虚血性心疾患,脳血管障害などの併存症を高率に有しています。

 大動脈瘤は自覚症状に乏しく、無症状に経過するため多くは健診や他疾患での病院受診時に偶然発見されますが、破裂に至って始めて診断されることも稀ではありません。破裂は非常に重篤な合併症で、突然死や病院来着前死亡を含めた死亡率は80%にもおよぶとの報告もあります。したがいまして、診療に際しては破裂前の早期診断と適切な治療が肝要です。

 瘤は径が大きくなるほど破裂する確率が高くなりますので、胸部では瘤径5.5~6cm,腹部では5cm以上が手術適応となります。手術は瘤の部分を人工血管に取り換える人工血管置換術が一般的に行われていましたが、2004年からカテーテルを介して鼠径部より挿入した血管内挿型人工血管により、血管の内腔から動脈瘤を治療するステントグラフト治療が保険適応となり、低侵襲治療として広く普及しています。本講座では大動脈瘤を概説し、ステントグラフトを中心とした最新の治療法について言及します。

講演動画

プロフィール

(現 職 名)国際医療福祉大学医学部血管外科教授、国際医療福祉大学三田病院 血管外科部長

 

(履  歴)

1984.03.    東京医科大学卒業

1984.05.    第77回医師国家試験合格 医籍登録番号282661

1984.06.    東京医科大学外科学第2講座研修医

1985.05.    東京医科大学外科学大学院入学

1989.04.    東京医科大学外科学大学院単位取得

1990.11.

〜1992.03. 啓愛会宝陽病院外科出張

1991.02.  学位取得

1992.04.  東京医科大学外科学第2講座 助手

2003.01.  東京医科大学外科学第2講座 講師

2007.12.    東京医科大学外科学第2講座 准教授

2010.07.    東京医科大学外科学第2講座 教授

2011.05.    国際医療福祉大学三田病院血管外科 教授

                    以後,現在に至る

 

(所属学会)

日本血管外科学会理事,日本静脈学会理事,日本脈管学会評議員,日本心臓血管外科学会評議員・国際会員,日本外科学会,アジア心臓血管外科学会,アジア血管外科学会など

 

(専門医等)

日本外科学会専門医・指導医、日本心臓血管外科専門医・修練指導医、日本脈管学会認定脈管専門医、日本胸部外科学会認定医,